イタクラノート

「誰でも助けを求めていいんだよ!!」・・・ただの産婦人科医の提案です

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こんにちは、副院長の渡邉です。

2022年の当院のミッションは「plan Bを実行しよう」。つまりwithコロナ、afterコロナの今後5年を見据えた中期的な行動計画を実行に移すことです。

今回自分に課したテーマはシンプルに「自殺を防ぐ」こと。重く深刻な内容ですが、我々産婦人科は他科に比べ女性や新生児、小児と関わる機会が多いため、このコロナ禍で特に女性と子どもの自殺率が上昇している現状に目を背ける訳にはいきませんでした。


民間レベルでの抜本的な対策は難しくても、きっと何か出来ることはあるはず。

ヒントとなったのが、以前に子どもの貧困対策と孤立を防ぐ目的で子ども食堂を開催し、実感したこと。それは、支援が本当に必要な子どもに有用な支援が届いているのか、子どものSOSを拾えているのか、特定のボランティアだけでやるべき活動なのか。

これらの疑問から導いた策は、地域住民の横のつながりを強化し、支え合うコミュニティを作ることでした。


そもそも人は狩猟採集時代から集団の中で支え合いや子育てをしてきました。しかし時代の移り変わりとともに地域住民のつながりは薄れ、核家族化し、競争社会の中で個人が孤立化しやすくなりました。

しかし、人は一人では生きていけない生き物。そしてその誰にでも限界があり、何らかの原因によりその限界を越えてしまい苦境に陥る可能性が、やはり誰にでもあります。

そんな時でも、安心して相談できる相手、手を差し伸べてくれる仲間が、周りに一人でも居れば救われる命があります。

地域住民の横のつながりが強化できれば、どこかに埋もれている小さなSOSや異変に誰かが気付き、情報共有することで他の誰かが救えるかもしれません。多くの仲間が集まれば大きな支援の力が生まれます。行政や福祉の支援に繋げていける可能性も出てきます。

このコロナ禍だからこそ原点に戻って、人が生きていく上で大切なつながりを取り戻すべきなのではないでしょうか。


それにはまず、多様な相談や問題にどのように対応していけるか考える必要があります。自分達に出来ることを見極めるために、引きこもりや抑うつ状態の子どもや大人、その家庭にアプローチすることを始めています。


また、地域の社会福祉士さんや自治会長さんの協力を得て、まずは自らの居住地でこのようなコミュニティを作ろうと地域住民の方々に呼びかけてみましたが、悲しくなるほど反応がありませんでした。低コストな回覧板から始めたので宣伝効果は低いだろうと予想してましたが。


ただ原因は他にもいくつか考えられます。他人に干渉するべきではないという風潮。他人に頼ることを恥じらう意識。自身の生活に精一杯で、他人に関わる余裕がない実情。努力が足りないからだとする自己責任論。苦悩を抱えている人が身近に居ないため、対策の必要性を感じていない。もしくは協力したいけど自分で助けてあげられる自信がないという方もいらっしゃるかもしれません。

何も気負う必要はなく、お互いを分かり合うということだけで、大切なつながりがすでに生まれています。

どこか宗教団体の勧誘のような感じになってしまい、得体の知れない活動には関わりたくないという方もいらっしゃるでしょうか。安心して下さい、ただの産婦人科医の提案です。


様々な考え方があるため、もちろん全員に強制する活動ではありませんし、他にも良い方法があるかもしれません。いずれにしても「誰でも助けを求めていいんだ」という安心感を皆で共有できるような町を、子ども達の世代に残せていけたらと願います。


今後はSNSZoomも活用する予定です。

挑戦は続きます。

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